トンネル切羽断面測定法の一提案


 

 昭和42年8月、徳島県那賀郡木頭村西宇で国道195号線道路改良に伴う「西宇トンネル」工事現場へ技術主任として赴任した、このトンネルは延長517mの半断面先進工法で掘削の予定であったが、徳島側坑口30m間の地質が安定していなかったので、底設導坑先進工法で30m間を施工しその坑奥で切りあがりをして坑口へ向いて半断面工法でで切り広げ施工した。

 当時のトンネル工法としてはまだ、NATMは導入されていなかった、坑口の30m間をのぞけば地質も概略安定していたので上部半断面先進工法を採用し施工に当たったが、標高が650m位の山間僻地での施工であり、特にズリ処理場のポケットが当初から問題となり設計で想定している岩の膨張率が大きい方に変化すればトンネル施工を中断してでもズリ処理場を新しく探すか、作らなければ成らない状態で有った、急峻なV型の谷を要する地形で有るからそう簡単に大量のズリを処理する場所は見あたらなかった。

 そのために毎日のトンネル掘進に伴う切り羽断面を測定し進行延長から掘削土量を監視する必要があり、当時簡単で安価に素早く出来る方法をいろいろと模索したが、私どもが採用していた方法は簡単であり坑夫たちの掘削進行を妨げることなく測定できた以下に当時の切り羽断面測定法の概略を説明します。

 

 西宇トンネル施工当時の断面測定法

1,
上図の赤線の様に設計掘削線に対してpay line を含む余堀が発生するのが常であるが、発破〜換気〜ズリ出し〜が終了時点では、切り羽の小そくも終わっているので切り羽正面にスタフおよびリボンテープ等を図のように設置する。
2,
天ダボから下げた下げ振りとトンネル軸線の延長上に三脚に乗せた写真機を設置する、(マミヤプレス6×9にエアーレリーズをつけて使用していた)
3,
トンネル切り羽から軸線上15.000m〜20.000m位離れレンズは150mmを装着し切り羽全面が写るようにカメラを設置する。
4,

切り羽の照明を暗くするか、落として、その切り羽の平面内に人が立ち釣り竿の先にビニールチューブ入れた白色の豆球を点灯させて、カメラはシャッターレリーズを使ってB(解放)にし、その間にゆっくりと切り羽掘削線をなぞっていく。

5,
ナショナルハイライト等の強力ライトでスタフ、リボンテープの上面を何度か照らしながらなぞる。
6,
切り羽の摂理や断層なども記録したい場合は、同様に強力なライトで照らし、シャッターの解放時間は30sec〜60sec位が適当であった。
7,
カメラのフィルムにはシャッターが開放されている間に露光した、切り羽掘削線およびスタフやリボンテープ等が露光され写されている。
8,
暗室で現像し、引伸器で焼き付けを行う時にスタフかリボンテープの目盛りから縮尺を合わせて置き、出来あがった白黒写真を プラニメーターで縮尺合わせ計測すると切り羽断面積がかなりの精度で算出できる。  
9,
撮影する切り羽にカメラのフィルム面が平行であることが重要である。

 


現在のデジタル技術を利用した断面測定法

 

1,

基本的には以前に測定していた方法と変わることは無いが、機材の進歩、画像技術の進歩CADソフトの一般使用により簡単に精度を上げることが出来る様になった。

 
2,
撮影機材としてはデジタルカメラが安価に汎用されだし、フィルムの様に現像する必要もなくノートパソコンで直接解析することが出来るように成った。
 
3,
切り羽掘削線を点照明でなぞって行くにしても、高輝度白色LEDを使って簡単に且つ消費電力の小さい器具の製作が可能となった。
 
4,

CADソフトの利用によりデジタルカメラからデジタル画像をCADに取り込み画像を図化することが極簡単に成った。

 
5,
デジタルカメラのシャッターを開放にし、その間に竿の先端に付けた高輝度白色LEDを点灯させ切り羽掘削線をなぞり、またスタフやリボンテープの表面を照明する。
 
6,
撮影したデジタルカメラよりノートパソコンに画像データーを読み込みphotoshop等の画像処理ソフトを使ってpictデーターに変換する。
 
7,

パソコンのCADソフト(VectorWorks)を使い切り羽のデジタルpict画像を読み込みCADの縮尺にpict 画像の大きさを合わせ、その上にレイヤーを被せてそのレイヤーで切り羽の点照明で露光している掘削線をCADの多角線でなぞり併合させると面積は即計算表示される。

 
8,
フィルムの様な暗室作業もなく、デジタルデーターは何度となくパソコンの上で使用できる、カメラの軸心が切り羽の断面の図心と一致させておけば、歪みの修正を行い精度を上げることが出来、45平米の切り羽断面で±2%〜5%の誤差で測定する事が出来た。

 


 

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